ホクホク感はあるのに煮崩れしにくく、揚げてもきれいな黄色から変色しにくいことから、幅広い料理に適したじゃがいもです。
雄大な大地が広がる、北海道東部の十勝地方。道内随一の畑作地帯であり、日本の食を支える農業地帯の一つです。自然豊かなこの地で、農家一軒当たりが営む農地の平均は約45ヘクタール。その数字から十勝の広大さが想像できますが、その中で95ヘクタール(約2.9万坪)もの農場でじゃがいも、豆類、小麦を中心に生産し、おいしい野菜づくりを追究し続けているのが折笠農場です。
この折笠農場で生産されているじゃがいものひとつが北海こがね。「男爵とメークインの中間くらいの食感で、ホクホク感とねっとり感の両方を楽しめる」「デンプン質が高く、煮込んでも煮崩れしにくくて、どんな調理でもおいしい」と、全国の組合員から人気の定番野菜です。
実は、この北海こがねを生産するようになったのはコープしががきっかけでもある、と話すのは、折笠農場の5代目・折笠 健さん。
「30年ほど前に、農薬不使用栽培を進めたくて、当時主流だった『メークイン』よりも収量が安定していて耐病性が高く、食味もよい『北海こがね』に切り替えようと考えていました。でも北海こがねは当時ほとんど知られていない品種でしたから、迷っていたんです。
そこでコープしがの前身のひとつ・湖南消費生協の組合員さんたちに両方を比較試食していただいたところ、食味アンケートで高い評価をいただき、『どうしてこんなにおいしいじゃがいもをもっと早く出荷しなかったの!』と叱られる始末。それで自信を持って切り替えることができたんです。そこから30年、今日まで続いている優秀な品種です。一般流通していない北海こがねを、食味や栄養、価格でしっかり評価していただいたコープしがの組合員のみなさんに、今後もおいしい品種をいち早くお届けしたいです」。
折笠農場のはじまりは、1910年までさかのぼります。初代・折笠休次郎さんが家族と共に、福島県相馬市から十勝に開拓者として入植しました。そこから115年が経ち、現在5代目の健さんが特に力を入れて取り組んでいるのが、農薬や肥料、堆肥を使わない自然栽培です。
「父である先代の折笠秀勝が『開拓時代の自然豊かな土地に戻す』を目標に定め、『おいしい』『安全』『安心』を合言葉に取り組み始めました。安全安心の農作物とは何かを考え、品種試験を繰り返して、北海こがねを取り扱い始めた理由もここにあります。
23年前には、『奇跡のリンゴ(スパイラル2024年1月号 5ページ参照)』で知られる木村さんが折笠農場に来られたことをきっかけに、重度のアトピー性皮膚炎や化学物質過敏症などで、通常の食品では生活が困難であり、オーガニックを必要とする人たちに思いを馳せるようにもなりました。お客様の食卓を想像し、私たちは誰に食べ物を届けているのかを常にイメージし、自然栽培にチャレンジし始めたのです。
20年前には、農薬を使わずに栽培できる「さやあかね
」という品種の栽培も始めたという健さん。「こちらも、生活協同組合の中でいち早く評価してくださったのがコープしがで、その評価がさやあかねの品種登録に大きく貢献したデータとなり、有機認定を受けています。今では、十勝オーガニック振興会の設立メンバーとして、オーガニックの考えを広げるための活動にも取り組んでいるんですよ」。
今、農地の総面積のうち33ヘクタールは肥料・農薬を使わずに栽培する圃場だという折笠農場。今後は野菜づくりだけではなく、有機野菜を使用した加工品の製造にも力を入れ、日本、そして世界が求めるオーガニックとは何かを追究し、未来に繋げていきたいと、健さんは奮闘し続けています。
コープしが30周年おめでとうございます。
組合員様にはいつも北海こがねとたまねぎをご利用いただき、ありがとうございます。
コープしがには設立前の大津生協、滋賀県北部生協、湖南消費生協からお世話になっております。
じゃがいもでは北海こがね、たまねぎでは知床たまねぎをいち早く評価していただき、取り扱っていただいています。固定概念にとらわれない、柔軟な考えをされている組合員様へ、これからもよりおいしい農作物を提案していきます。
生協とともに歩み、生協の組合員様に育てられた折笠農場グループが、今後どう活動していくか見ていてください。
じゃがいもは、エネルギー源となる炭水化物のでんぷんが主成分ですが、白ごはんに比べカロリーは半分程度で、ビタミンCやカリウムを含んでいます。ビタミンCは水溶性なので、本来調理による損失が大きい栄養素ですが、じゃがいもに含まれるビタミンCは、でんぷんに包まれているので流失しにくく、熱にも強いのが特徴です。
皮の近くにはクロロゲン酸という抗酸化作用のあるポリフェノールの1種が含まれているため、皮ごと調理するのがおすすめですが、芽や皮の緑の部分にはソラニンという毒素が含まれているので、その部分は取り除くように注意しましょう。
またじゃがいもは、世界中に約2000品種あるといわれており、日本では約20品種が流通しています。代表的な「男爵」、「メークイン」以外にも、お好みの品種を探してみるとじゃがいも料理の幅が広がります。
青森県弘前市で農家を営む木村秋則さんのことです。リンゴの栽培に農薬は不可欠といわれていた時代、「絶対に不可能」といわれる農薬を使わないリンゴの栽培に取り組みました。
様々な困難を乗り越え、挑戦し始めてから10年後に農薬・肥料を使用しないリンゴ栽培に成功。これは世界的な常識をくつがえす偉業であり、木村さんのリンゴは「奇跡のリンゴ」と呼ばれて同じタイトルで書籍が出版され、映画化もされました。
そんな木村さんが、当時すでに有機農法を推進していた折笠農場まで足を運び、「北海道の中でも規模が大きい折笠農場さんから変われば、ほかも変わる」と伝えたことを機に、折笠農場は現在の栽培方法に向けて本格的に取り組み始めることになりました。