お弁当やおかずの彩りの定番といえば、ミニトマト。高温多湿を嫌うミニトマトの旬は、春から初夏にかけてと言われています。とくにこの季節のミニトマトは、風味が良くて食べやすいのが特徴です。今回は、産直滋賀県産ミニトマトを生産している滋賀有機ネットワークを訪ね、おいしさの秘密について教えていただきました。
ミニトマトを栽培している大中の湖 ミニトマト生産部会の皆さん
産直滋賀県産ミニトマトを生産しているのは、1月号の「ブロッコリー」で紹介した滋賀有機ネットワークの「大中の湖産直連合」大中の湖ミニトマト生産部会の8名です。琵琶湖の内湖を干拓した農業地帯で知られる大中地区にあります。滋賀有機ネットワークには「大中の湖産直連合」の他に「栗東有機栽培グループ」「安土産直部会」の生産グループがあり、協力して栽培技術の向上や産直流通の拡大、安全な農産物の安定供給に取り組んでいます。
ミニトマトの栽培を始めたのが27年前。大玉のトマトやきゅうりを作っていた浜田和夫さんが、偶然スーパーで見つけたミニトマトを見て「子どもの弁当に入れてみたい」と商品化を思案。ミニトマトの栽培経験があった豊橋の友人を訪ね、ハウスを見学したところ、「これはいける」と“農業家”としての直感が働いたといいます。時を同じくして、コープからミニトマトの生産依頼があったこともあり、きゅうりを生産していた仲間5人に声をかけ、新たな領域に挑戦することになったのです。
近年は、若い生産者の育成にも力を入れている浜田さん。現在は新規の就農者2名を含む8名で、ミニトマトの栽培に取り組んでいます。
トマトの原産地は諸説ありますが、南米アンデスの高原地帯に自生していたという説が有力です。観賞用だったミニトマトから大玉のトマトへ分化し、メキシコからヨーロッパに広まったとされます。そう、ミニトマトはトマトを品種改良したものではなく、実はミニトマトのほうが原種なのです。
ミニトマトは、日本ではかつて飛行機の機内食用の少量生産品でしたが、桃太郎トマトが開発された昭和50年後半頃から、「ひと口サイズで食べやすい」「彩りとして重宝する」といった特徴が消費者に受け入れられ、盛んに栽培されるようになりました。
ハウスでは、近江牛の堆肥を利用した肥沃な土壌に、稲のわらや、土壌中の微生物を活性化させる働きがある米ぬかを混ぜた有機肥料で土づくりを行っています。室内では、風に代わって“マルハナバチ”が受粉を助けています。そのハチへの影響も考え、室内は12~13度に温度設定し、農薬使用は地域で一般的に使用される量の5割以下に抑え、滋賀県の環境こだわり農産物の認証も得ています。
軸に付いた病気(カビ)を一つ一つ手作業で焼き、駆除します。時期によっては2週間に一度行われ、健康なミニトマトを育てます
育成が一番難しい季節は冬場。日照不足で葉の厚みが出ず、色も薄くなってしまいがち。この時期の手入れを怠ると、春以降においしい実ができないといい、浜田さんらは手作業で軸や葉の病気のチェックを行っているそうです。
軸に付いた病気(カビ)を一つ一つ手作業で焼き、駆除します。時期によっては2週間に一度行われ、健康なミニトマトを育てます
一般的なミニトマトの糖度は3~5度ですが、浜田さんらは「最低でも8度にはしたい」と高い目標を掲げておられます。旬を迎える3月~6月ごろの糖度は11度にもなるそうで、これは旬のみかんやスイカの甘さに匹敵する数字。「それに加えて酸味も大事。水分量とのバランスをとり、コクのあるトマトを目指しています」。宝石のように赤く輝くミニトマトには、甘みとともに作り手の想いがギュッと詰まっています。
ヘタは雑菌がつきやすく、繁殖もしやすいので取った方がいいでしょう。弁当箱に入れる際は、取ったほうが安心ですね。ちなみに、市販の弁当に入っているヘタ付きトマトは塩素消毒されているので心配ありません。
トマトもミニトマトも強い抗酸化作用があり、βカロテンやビタミンC、E、B群、ミネラルなど身体にとって重要な栄養素が多く含まれています。両者を比較してみると、可食部100gあたりのビタミンB2は、トマト0.02㎎に対してミニトマトは0.05㎎、マグネシウムはトマト9㎎に対して13㎎、βカロテンに至っては210μgに対して960μgと4倍以上。その小さな実には、健康や美肌に良い栄養素がたくさん詰まっているのです。