黒ごまたっぷりかりんとう(100g)
黒ごまの香ばしさを引き立てる国産黒豆しょうゆを使った、みたらし風味のかりんとう。あっさりとした甘じょっぱさで、後を引くおいしさです。
「滋賀県にかりんとう専門の工場があったんだ」と、初めて知る方も多いかもしれません。実をいうと山脇製菓は昭和32(1957)年に東京都豊島区で創業した菓子メーカー。江戸時代より庶民の味として親しまれてきた黒糖かりんとうを手始めに、斬新なアイデアでさまざまなヒット商品を開発。東京本社の工場が手狭になったのをきっかけに、昭和43(1968)年からすべての商品を滋賀工場で製造しています。
「もともと創業者が滋賀出身で、『いつかは故郷に恩返しを』と考えていました。そこで東近江市に工場を建て、地域に雇用を生み出し、より多くの方へ商品を届ける足掛かりにしたのです」と、山脇製菓 統括営業本部の柴本聡さんと鵜浦由里奈さん。
「どちらかといえば、かりんとうは年配の方に支持をいただく商品です。しかし、後世に残すためには、若い世代にも食べてもらえる商品を開発しなければなりません」。
これまでに同社では宇治抹茶かりんとうやレーズンかりんとう、瀬戸内レモンかりんとうなどユニークな商品を次々に開発し、世間の注目を集めてきました。そんなチャレンジ精神の一環で、2016年に誕生したのが黒ごまたっぷりかりんとうです。(当時は「ごまたっぷりかりんとう」として販売。2018年に商品名を変更)
「黒ごまたっぷりかりんとうは、とくに女性のお客様に気に入っていただける商品です。黒ごまにはセサミンが豊富に含まれていますから、健康志向の方にも好んで食べていただける。当時の開発担当者もそのあたりを意識したのでしょう」。
小麦粉を使った生地に対して約30%の黒ごまを配合し、ザクザクと小気味よい食感とともに黒ごま特有の香ばしさが口いっぱいに広がります。それにしても、この歯ざわりのよさ……。かりんとうの中には噛むのをためらうほど硬いものもありますが、山脇製菓のかりんとうはどれも軽やかな歯ざわりです。
「カリッと揚がるこめ油を使用して、温度の異なる4つの釜で4度揚げしています。業界でも3度揚げは多いのですが、4度揚げとなると珍しい。しかし、この製法でないとうちの商品にはならないのです」。
こめ油は、玄米1合の米ぬかからわずか2gしか取れない貴重なもの。それを惜しげもなく使うところも、かりんとうメーカーのプライドです。さらには4度揚げにすることで油が中までしっかり浸透し、外はカリッと、中からジュワッと蜜の甘みが染み出すようなかりんとうに仕上がります。
「黒ごまたっぷりかりんとうは、独特の甘みのある黒豆しょうゆで仕込んだみたらし風味の蜜を使います。蜜ももちろん自社製で、荒焚き→中焚き→本焚きと釜で3度も焚いています。こうすることできめの細かい、口どけのよい蜜になります」。
まさに1本1本に熱い職人魂が込められた逸品です。その昔、かりんとうは手軽に栄養補給できる軽食として持ち歩かれていたそうですが、同社では「学生のカバンからグミではなく、かりんとうが出てくる時代」の到来をめざしているそう。最近、かりんとうを口にしていない方も、日本古来の伝統菓子のおいしさに改めて気づくことでしょう。
そもそもは奈良時代に遣唐使によって油で揚げる技術がもたらされ、揚げ菓子のかりんとうが誕生したという説があります。一方で、遣唐使を遣わす以前から「焼く」「蒸す」などの技術を駆使して、かりんとうの原型となるものが作られていたとする説もあるのです。ただ、歴史をたどれば日本発祥の伝統菓子であることは間違いなく、民衆にまで広まったのは江戸時代のことでした。当時、白いお砂糖は献上菓子に使われるたいへん高価なものでしたから、庶民のお菓子のかりんとうには黒砂糖が使われていたそうです。(お話:山脇製菓 柴本さん)
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