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ライフジャーナル
介護保険って、どんな制度?

介護保険制度が始まって15年。これまで何度も改正されてきましたが、今年の4月にも新たな改正が行われました。
そもそも、介護保険ってどんな制度で、どのように利用するものなのでしょうか?
そして、今回の改正と、これから目指すものは?
コープしが福祉事業部の福祉事業アドバイザー・海岸秀さんにお伺いしました。

そもそも介護保険って?

介護が必要になったとき、さまざまなサービス(介護保険サービス)を1割の費用負担で利用できる制度。理念は、高齢者の自立を支援すること。市区町村が運営し、都道府県がサポートしています。

  1. 40歳になると、国民全員が介護保険料を納めなければなりません。この保険料と税金で介護保険制度が運営されています。
  2. 65歳になると、介護保険サービスを1割負担で受けることができます。
  3. 介護保険を利用するには、まず、「要介護」「要支援」といった要介護認定を、市町村から受けなければなりません。

利用のスタートは、「相談」

コープしが福祉事業部・福祉事業アドバイザー、龍谷大学非常勤講師、社会福祉士、介護支援専門員
海岸 秀さん

 日常の暮らしで「ちょっと困ったな」と感じたら、まずは相談しましょう。「親が衰えてきたらどうしよう」でもいいのです。相手は、市町村や地域包括支援センターのほか、コープしが「ケアサポートセンターぽこ」のような介護事業者や民生委員さんでもOKです。

 利用のきっかけは、例えば「お風呂の浴槽をまたげなくなったことで、一人で入浴できなくなった」というように、下肢筋力の低下により日常の生活に支障がでてきたというところから始まることが多いです。でも、機能低下にしても認知症にしても、環境を整えることで進行を遅らせることが可能ですから、なんともならなくなってからではなく、もっと早い段階で相談することが望ましいです。

市町村に、要介護認定を申請します

 要介護認定(右下囲み記事の③参照)の申請は自分でもできますが、地域包括支援センターや介護事業者に代行してもらうといいでしょう(費用は無料)。結果が出るまでにはだいたい1か月ほどかかります。

 認定は「非該当」「要支援」の1・2、「要介護」の1~5という8区分があります。区分により利用できる介護サービスが変わってくる場合があるので、認定に不服がある場合は、再審査を求めることができます。時には結果の変わることもあります。利用者の体調が、調査の時はたまたま良かった、例えば片足立ちができたとか、認知症があるがその日はハキハキ話せたということもあるからです。

ケアマネージャーなどに、プランを立ててもらいます

 「非該当」でなければ、いよいよ介護保険サービスの利用となります。まずは、どの事業者にどんなサービスを依頼するかなどの介護サービス計画(ケアプラン)の作成が必要になります。これは、利用者自身でも作成することは可能ですが、通常はケアマネージャー(介護支援専門員)に依頼して作成(無料)してもらいます。

 ケアマネージャーはケアプラン作成のほか、介護事業所との連絡調整を行うことや、利用者・家族の相談に対応することが主な業務です。どこの事業所のケアマネージャーに依頼するかは利用者が選べます。

 介護サービスは、自宅で受けるもの、施設に通うもの、施設に入所するものという具合に分けられますが、その中身は、杖や歩行器・車いすのレンタルから、入浴や排泄などの身体的な援助、リハビリ・医療的なケアまで、非常に多岐にわたります。市町村や学区単位で独自のサービスを提供している場合もあります。これらの中から、ご本人の希望ももちろんのこと、身体の状況や暮らしている環境など多方面から分析した上で最適なサービスを組み合わせていきます。

デイサービスぽこの場合

 デイサービスは、食事(昼食)、入浴、余暇活動がおもな内容です。例えば「ぽこ」の場合、午前9時30分から午後4時40分までの7時間強を過ごしていただきますが(希望に応じて変更できます)、食事・おやつ・入浴を合わせても2時間ほどなので、余暇時間が十分あります。「ぽこ」ではストレッチ体操と月に一度のイベントの他は特に日課を決めず、利用者の方がその日の過ごし方を決められるようにしています。みなさん、リハビリや談笑をしたり、趣味に興じたり思い思いに過ごされています。

 食事にはこだわりがあって、利用者から見える厨房で調理し、できたてを食べていただいています。食材はコープしがの宅配で注文しており「今日は何食べたい?」と、利用者に聴きながら考えています。できるだけ家庭と同じにしたいのです。

 また「生活リハビリ」といって、生活動作がリハビリになるようにしています。例えば、いすの高さを工夫して、立ち座りが自然にできるようにしたり、入浴は機械に頼らず、マンツーマンの介助をし、立ちあがり等の動作を何度かするといった具合です。

施設の選び方は?

 デイサービスでも施設入所でも、事業所を決める際には、いろいろ訪ねて、なんでも聞いてみましょう。見学時は、建物の新しさや設備よりも、一人の利用者の方に焦点をあて、しばらくさりげなく目で追ってみてください。その人が居心地良さそうにしているのか否かに注目してみてください。最終的に、「良い施設」かどうかは、実際に利用する人が心地よく感じられておられるか否かが判断基準になるでしょう。

身近な地域の中でまかなっていく介護制度へ

 介護保険制度は今、地域包括ケアシステムというものを目指しています。これは介護が必要になっても、住み慣れた場所で暮らし続けられるよう、徒歩30分圏内で必要なサービスを提供できるようにしよう、商店街や住民も含めてみんなで支えていこうというしくみです。そして、さらに財政難を乗り越えるために「予防」やボランティアを積極的に取り入れていくという趣旨で2015年4月から介護保険制度が改正されました。主な改正ポイントの抜粋です。

地域での取り組みが充実
  1. 地区医師会と協力し、医療と介護を連携させていく。
  2. 認知症対策は「危機」の発生を防ぐ「早期・事前的な対応」とする。
  3. 地域サロンや見守り・安否確認・外出支援等、市町村が独自に手掛けてきたものを、NPO、民間企業からも提供しつつ、これらの担い手となるボランティアの養成・発掘。
サービスの重点化・効率化
  1. 全国一律だった「要支援」認定者へのホームヘルプサービスとデイサービスを、市町村の取り組みに移していく。
  2. 特別養護老人ホームの新規入所者を、原則「要介護3」以上に限定。
費用負担を公平にしていく
  1. 低所得者の保険料をより軽くし ていく。
  2. 一定以上所得のある利用者の自 己負担を引き上げる。

 介護保険は「介護が必要な本人や家族を社会全体で支えますから、使ってくださいね」というのが出発点です。「家族でなんとかやれるから」などと考えて利用を遠慮することはありません。介護保険は、積極的に使いましょう。


地域福祉に対する生協の社会的役割の発揮 ~コープしが福祉政策より~

 今回の介護保険改正は、地域包括ケアシステムに表わされるように、介護をより地域に根差したものに転換する意義をもっています。しかし、保険利用の制限、保険料・利用料の引き上げや、2017年までに要支援者サービスは介護保険から外し市町村事業に切り替える等、国が責任を持つべき公的社会保障の後退という面もあります。コープしがでは改正の積極面と問題点を踏まえ「地域福祉づくりへの参加」と「介護保険制度の問題点について社会的発信」の両方について取り組んでいきます。
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