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ライフジャーナル
こどもの能力を引き出すコーチング

「また今日も感情的に怒ってしまった」「いつも『早くして』と言ってしまう」
「子どもの良い所を伸ばしたいのに、怒ってばかり…」
など、子どもとの接し方について悩んでいるお父さん・お母さんは少なくないはず。
子育ての不安は尽きませんが、のびのびと、意欲的な子どもへと導く方法の一つとして注目されている「コーチング」で、
子どもとの接し方を変えてみませんか?今回はビジネスコーチであり、キャリアカウンセラー、
そして子育てのコミュニケーションコーチとしても活躍されている栗栖佳子先生にお話を聞きました。

「与える」ティーチングと「引き出す」コーチング

 ティーチングは、親や大人が持っている基本的な知識やスキルを子どもに教え、与えることです。大人が持っている経験や知識を伝えるので、大人の限界が子どもの限界になります。

 大人と子どもは上下関係になりやすく、子どもは自分で考えるよりも模範解答を欲しがるようになります。

 コーチングとは「コーチ=馬車」という語源からもわかるように、大切な人(子ども)が行きたいところまで送り届けることです。子どもの夢や目標を叶えるために必要な答えは、必ずその子どもの中にあると信じて接することが、コーチングの基本です。大人は子どもと対等な関係で、子どもの夢や目標を叶えるために必要なやる気や能力、自主性、可能性を、コミュニケーションを通して子どもの中から引き出していくのです。

まずあなたの本音を「聴いてもらいましょう」

 「早くしなさい」「片付けなさい」―特に忙しい時はつい「○○しなさい」と言ってしまいますが、こうした指示、命令的な言葉ばかり聞かされていると、「言われたことはするけれど、自発的に『何かしよう』という意欲や好奇心が少ない人間」になってしまいがち。

 でも、人生や仕事に模範解答はありません。必要なのは、自分で気付き、自分で考え、工夫して、自分から行動する自発的な行動力です。
 この部分を育てるのがコーチングのコミュニケーションです。そのためには、まず自分自身とのコミュニケーションが必要です。「自分が今、辛いのか苦しいのか、幸せなのか」ご夫婦でもお友達同士でも良いので、本音を聴いてもらってください。

 話を聴く場合、つい話を途中でさえぎったり、「こうしたら良い」などアドバイスしたくなりますが、必ず最後まで何も言わずに聴いてもらうことが大切です。なぜなら、私たちは日頃最後まで自分の気持ちをしっかりと聴いてもらっていないからです。

 自分の心に一杯たまったものを一つひとつ受け取って聴いてもらうだけで、気持ちが落ち着き整理されます。ただ何となく“ 聞く”のではなく、相手のことをわかろうと真剣に耳を傾けて “聴く”というコミュニケーションを経験すると、今度は子どもとしっかり向き合えるようになります。 誰もいないならノートに書き出しても良いので、自分の本音を言葉に出してみましょう。

毎日3分間、親子の「聴いてタイム」を作る

 子どもは、忙しい時に限って「聞いて聞いて」を連発します。「後で」と言っても、子どもにとっては今、その時に受け取ってもらいたいものがあるのです。だから毎日2~3分、時間を決めて「聴いてタイム」を作ってください。本人が言いたいことを、急かさず、子どものペースで聴いてあげましょう。しっかり話を聴いてもらうことで、子どもの中には安心感と満足感、そして親に対する信頼感が生まれます。聴いている「ふり」ではなく、真剣に聴くことが大切です。親の言うことと態度が違うと子どもは戸惑い、自分の気持ちを出さなくなってしまいます。話すことがなくなってきたら、「ほかにはある?」と質問してみましょう。子どもは「ほかにまだあったかな?」と自分で感情を整理して考えるようになります。

 逆に、親が子どもに自分の気持ちを伝えることも大切です。大人も失敗するし悩みもある。完ぺきではない。悩んでいることがあるという弱い部分を見せるのです。子どもは意外にしっかり受け止めて聴いてくれます。

IメッセージとYOUメッセージ

 子どもがあなたの話しを聴いてくれたら、「ありがとう、聴いてもらって元気が出たよ」など素直に自分の気持ちを伝えましょう。すると自分は人を元気づけたり励ましたりできる存在なんだという自己肯定感が芽生えてきます。

 この自己肯定感が高まると自分の良い所を知っているだけではなく、人の良い所も見つけられる人間になります。逆に自分の欠点ばかり目につく人は、他人の欠点もすぐにみつけます。これがいじめに繋がる一因になるのではないでしょうか。

 また叱る時は「約束を守らないとダメでしょう!」と「あなた」を主語にしたYOUメッセージで頭ごなしに叱るのではなく、約束を守ってもらえないので「(私は)悲しい気持ちになった」「(私は)とても嬉しかったよ」など、私の正直な気持ちをI(愛)メッセージで伝えてみましょう。何度言っても子どもが変わらない時は、YOUメッセージになっているのかも。
 自分の気持ちを感じ取り、相手に素直に自分の気持ちを伝えるセンスを親子で磨くことで信頼感が深まり何でも話し合える素敵な関係を築けます。

子どもが何かできた時に「えらいね」という褒め言葉は、親の言うことに従ってできたから「えらい」と評価するので、YOUメッセージになります。

キーワードは「かも」

 子どもが小さいうちはティーチングが多いかもしれませんが、そこにコーチングをプラスして、「できるかも!」「やってみてもいいかも!」という魔法の言葉「かも」をたくさん引き出してください。そして、例えば100点満点で50点だったら「あと50点頑張れ」ではなく、50点できたことを認めてあげましょう。その上で、どうすればもっと良くなるのかを一緒に考えてみるのです。子どもがワクワクする場所に立てれば、自らゴールに向かって進んでいくはずです。

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