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ライフジャーナル
夏の困りごと 汗と臭い対策

五味 常明 先生
五味クリニック院長、多臭多汗研究所所長。精神科医として自臭症(じしゅうしょう=周囲から臭いと思われていると思い込む精神疾患)の研究に取り組んだのがきっかけで、汗と臭いの専門家に。「汗っかきを治す72のワザ+α」(保健同人社発行)など、著書・監修書多数

夏の暑さが増すにつれ、気になるのが汗。肌のべとつきや臭いに不快感をつのらせる人も多いですよね。汗の臭いを気にする人は、女性だけでなく男性にも急増しているのだとか。そんな汗の仕組みと付き合い方を、汗博士の五味常明さんにうかがいました。

汗は体温調節の要

 汗は厄介者と思いがちですが、そもそも、なぜ汗をかくのでしょうか?  代謝で発生する熱から体を守っているのが汗。人間が体の機能を最適な状態で保つ体温は37℃弱とされています。体内で最も盛んに代謝が行われているのが脳細胞で、体温のわずかな変化にも反応します。体温調節中枢は脳の中の視床下部にあり、37℃弱で調整できるように、ここで汗をコントロールしています。

 また、体調不良で汗をかく機会が減り汗腺の機能が衰えると、体温調節に貢献する汗をかきにくくなります。

汗そのものは無臭

 汗を分泌する腺は、エクリン腺とアポクリン腺の2種類あります。一般的に汗をかくときいうときの汗はエクリン腺、腋わ きが臭の原因となる汗はアポクリン腺から分泌されているのです。

 エクリン腺は体全体に分布し、体温調節のほかに、緊張したり驚いたりしたとき、辛い物を食べたときに発汗する役割も担っています。一方、アポクリン腺は、ほとんどがわきの下、乳輪やへその周囲などごく限られた場所にあります。その役割は、個性的な体臭の原因となる汗を分泌すること。

 エクリン腺の汗もアポクリン腺の汗も、汗腺の中にあるときは無臭です。エクリン腺の汗の場合は、皮膚の表面で垢や皮脂、ほこりなどと混じり合い、4~5時間で雑菌が増殖して分解酸化が促され、匂いの物質を発生。これが〝汗臭さ〟です。

汗の抑え方にコツあり

 汗をかくたびにゴシゴシとタオルでふいているのに、いつまでも汗が止まらないということはありませんか? 実は、この汗のふき方は、汗が皮膚表面で蒸発して体温を下げる働きを阻害してしまっているのです。体温を下げることができないので発汗刺激が収まらず、いつまでも汗をかくという悪循環を招いています。

 流れるような汗は軽くふくだけにして、皮膚表面はしっとりと汗で湿った状態を保つのがベスト。汗の匂いの成分は水溶性なので、湿ったタオルで汗を吸い取るように軽くふくと、臭い対策になります。

 また、大きな動脈が通っている首回り、わきの下、手首などを保冷剤で冷やすと、冷やされた血液が全身を回り、体温を低下させて汗が減少します。

 さらに、汗をかく時期の衣類の選択も非常に大切です。汗が付着して気持ちが悪いだけでなく、汗の蒸発が悪いと体温調節がうまくいかず、健康に影響することも。衣類は、「吸水性」「速乾性」「通気性」を重視した機能的な繊維、形状のものをうまく利用しましょう。

汗は皮膚(ひふ)の老化を予防する

 あまり知られていませんが、汗は、皮膚の老化を予防します。汗が皮膚の表面で皮脂腺の皮脂ともに皮脂膜を形成するおかげで、常在菌の表皮ブドウ球菌が多く住めるようになります。この菌には、肌を健康な状態に保つ役割があり、汗をかくことで、皮膚の新陳代謝が促進されているのです。

 汗を邪魔もの扱いせず、汗のかき方や臭いを制しながら、上手に汗とつきあってみてはいかがでしょうか。

 なお、多汗、臭いがとても強い場合は、精神的な作用やほかの病気が原因となっている場合もあります。そのようなときは、皮膚科など一般の医療機関を受診してみることをおすすめします。


手作りミョウバン水で全身汗対策!

制汗作用を持つミョウバンは、酸性のため菌の繁殖を抑える働きを持っています。常在菌を殺す心配がないので、ミョウバン水は全身に使用できます。

作り方
  • 基本は、市販のミョウバン(約17g)と水(500ml)をペットボトルに入れて、よく振ってできあがり。そのまま1日置いておくと、ミョウバンが溶けて透明になる。
  • 冷蔵庫保存で1カ月ぐらい持つが、1~2週間で作り変えるのが良い。
  • 汗をより抑えたい場合は、ミョウバン水の濃度を濃くしたり、ミョウバンの粉末を直接皮膚に塗布する。
使い方
  • ガーゼに浸して、臭いの気になるところをふく。
  • スプレー容器に入れて皮膚にスプレーする。

制汗剤・デオドラント剤は、極所的な使用が大原則!

臭いのレベルおすすめタイプと成分
軽く気になる
  • 清涼感が得られる「スプレータイプ」
  • 制汗成分を配合した「シートタイプ」
  • パラベンや植物性の消臭成分が配合されたもの
汗をかいた後、けっこう臭う
  • 皮膚に直接塗布するロールオンやスティックの「直塗りタイプ」
  • 衣類にスプレーする「消臭剤」
  • 腋臭が強い場合は、塩化ベンザルコニウムなどの強い殺菌成分が配合されたもの
  • 腋臭が中程度以下の場合はイソプロピルメチルフェノール、銀などややマイルドな成分が配合されたもの
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