滋賀短期大学特任教授
清水たま子さん
春を迎えるこの時期は、卒業・入園・入学など、お祝い事の多い時でもあります。贈り物をするにあたって、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか?
今回は滋賀短期大学特任教授の清水たま子さんに、お祝いのマナーについてアドバイスをいただきました。
喜び事にあたって何かを贈り、お祝いすることは、人間社会での心のやり取り。ひとつのコミュニケーションです。自分の生活を脅かすようなことは改善していくべきだと思いますが、かと言って、人との関わりがわずらわしいと思うような無機質な人間関係も、寂しすぎます。喜びを分かち合うことは、人間関係を深めることです。心豊かに、分相応に、人との関係を築いていきましょう。
金額的には、自分ができる範囲の中でお祝いをすれば良いと思います。コツは、決めた予算を贅沢に使うことです。たとえば1000円と決めたら、1000円のボールペン。普段、ボールペンに1000円も使いませんよね。その予算内で調達できる最上のもの、普段は簡単に買わないものを贈ると、喜ばれるでしょう。ただし、タブーというのがあるので気をつけて。例えば新築祝いなら、火を連想させるようなコンロやストーブ、あるいは鮮やかな赤一色の花束などは避けるといったことです。こういうことはマナーのひとつなので、覚えておきたいですね。
また入園・入学祝いは、現金で渡す方が良いのではないでしょうか。私自身も、甥や姪の子どもの入園・入学祝いは現金でした。「これで足しになるかしら?」と言って渡しました。金額的には、最低1万円は包むようにしています。ランドセル一つでも万単位の出費ですよね。若い方が何かをそろえなければならないような時には、現金を贈るのが良いかと思います。
ただ、目上の人に現金や商品券を贈るのは失礼とされています。たとえば、定年退職のお祝いに部下から連名で10万円の商品券をもらったとすると、もらった方は、何か迷惑をかけてしまったなぁ、という気持ちになるのではないでしょうか。どうしても差し上げた時には、箱菓子に添えて、「お好きなものを…」と言って渡すのが良いでしょう
お祝い事の贈り物を持っていくのは、大安吉日の日の高いうちにと言われています。ただ、現代はお互いに忙しいですから、お祝いの相手も了承済みで夜に訪問するということはあります。いずれにしても、あらかじめ訪問の日時を伝えておくことが必要です。 最近は贈り物を紙袋で持っていきますが、それを紙袋のまま渡す人が案外多いです。紙袋は、昔で言えば風呂敷です。風呂敷だと、ほどいて中身だけ渡しますよね。紙袋も同じ。中身だけ相手に渡して、紙袋は持ち帰るのがマナーです。紙袋は、風呂敷同様道中のホコリよけと考えましょう。
ただし外出先などでは、持ち運びに便利ですから「紙袋のままですが」と、一言添えて渡す場合もあります。訪問して贈り物を渡す場合、タイミングは、原則として訪ねてすぐです。それが玄関先なのか、上がってからなのかは迷うところですが、訪問先の方が「上がってください」と言えば上がって、態勢を整えて、挨拶してから渡します。すぐに帰る場合は、玄関で手袋やコートを取り、「すぐにおいとましますが、お気持ちを伝えたくて」、などと言って渡します。
プレゼントに限らず、お中元でもお歳暮でも、デパートやスーパーから配送してもらえるのをよいことに、贈りっぱなしにするのは良くありません。「歳暮の印に○○を送りました、ご笑納ください」、というような内容をハガキなどで事前にお知らせできると良いですね。目上の人には特にそうです。
日が過ぎてしまってからのお祝いはなんだか興ざめです。そういう時はそれぞれに理由をつければ良いと思います。入学祝いだったら、「元気に通っていらっしゃるのを見てお祝いをしたくなりました」とか、新築祝いなら「本来なら上棟式にお贈りすべきでしたが、気持ちばかりの物ですので…」と言って、「そんな気持ちも込めて」と、何かの節句や誕生日などの機会にお持ちすると良いでしょう。
春のお祝い事は、入園・入学・就職など、身内のお祝いが多いので、堅苦しく考えずとも良いと思います。しかし、最小限のマナーは守りながら、贈り物をしたいものです。普段とは違う節目の時です。「このたびは○○おめでとうございます」と、改まった挨拶をするのも、生活のメリハリ、あるいは人間関係の潤いになるのではないでしょうか。
「二度と繰り返して欲しくない」という意味が込められています。主に結婚式、関西では出産祝に使われることも。
何度も繰り返して欲しいという意味が込められています。慶事一般に使います。
結び切りの変形で、結び目を華やかにしたもの。意味は結び切りと同じです。
「表書き」とは、贈答品の上からかけられた掛け紙(のし紙)や祝儀袋に書く「お祝い」や「お中元」の文字、贈り手の名前のことを言います。
筆ペンでもボールペンでも良いと思いますが、お祝い事では、黒々と堂々と書くのが良いとされています。
贈り手の名は必ずフルネームで書きます。ビジネスの場合は、社名・役職を書きます。何行になってもかまいません。
贈り物が届いたら、すぐにお礼をしましょう。手紙・ハガキ・電話・メール、どれでもかまいません。受け
取ったことを知らせる意味でも大切です。きっと贈り主も、届いたかどうか気にしていることでしょう。
お礼の仕方は、まず初めに「ありがとう」という気持ちを伝えることです。次に、どのようにありがたいの
か、うれしいのかを、短くてかまわないので、述べましょう。
私の経験でうれしかったのは、姪の子どもに贈り物をした時、その子自身からお礼のハガキが届い
た時です(右参照)。手書きで郵便というのが、あたたかいですね。
日常は照れ臭くて使いにくい言葉が、eメールだと使えると聞いたことがあります。いつもと違う言葉で
のお礼も素敵です。相手に合った方法で、心を込めてすればきっと喜ばれるでしょう。