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魚のゆりかご 水田プロジェクト


滋賀県農政水産部農村振興課
地域資源活用推進室
田中 茂穂さん

マザーレイク・琵琶湖。その面積は県全体の6分の1を占め、県内で降った雨のほとんどが流れ込む…という事は、県民の誰もが知る話。でも、「琵琶湖のこと、実はあまり知らないかも…」という方が、多いのではないでしょうか。
2019年2月、滋賀県の「琵琶湖と共生する農林水産業」が、農林水産省の日本農業遺産に認定されました。そしてさらに、「琵琶湖システム」として世界農業遺産の候補になっています。今回は、琵琶湖と共生するための農業の取り組みのひとつ、「魚のゆりかご水田プロジェクト」についてご紹介します。

水田環境の変化

ニゴロブナ ニゴロブナ

ニゴロブナ

琶湖周辺の田んぼは、お米を作るだけでなく、ニゴロブナなど湖魚の産卵や稚魚の生育の場として重要な役割を果たしてきました。田植えから中干し(※)までの田んぼに水が張られる時期(4月6月頃)に雨が降ると、湖魚が産卵のために群れをなして琵琶湖から田んぼなどへ押し寄せてきたそうです。昔の人は、その光景を「魚島うおじま」と呼んでいました。

田んぼで産まれ、すくすくと育った稚魚は、中干しと同時に琵琶湖へ移動し、大きく成長します。そして再び田植えの季節になると田んぼへ産卵にやってくる…。稲作と魚の営みのスケジュールが見事に一致していたのです。

※中干し…夏の暑い盛りに田んぼの水を抜いて乾かす作業

整備前の水田(湿潤)と現在の水田(乾田)

一方で、湖岸の田んぼは、琵琶湖水位の変動の影響を受けやすく、たびたび浸水被害に見舞われたり、腰までつかって田植えを行うなど農家は大変苦労されていました。このため、昭和40年頃から農業生産性の向上を図る圃場ほじょう整備が行われました。

その結果、大型機械の導入や田んぼから畑への転換などが可能になり、農業の効率は飛躍的に向上しましたが、水路を深くしたことで、魚が田んぼに遡上しにくくなりました。また琵琶湖総合開発により、私たちの生活は便利になりましたが、琵琶湖水位は以前より低く管理されると共に、湖岸堤の建設により田んぼと琵琶湖の間の魚の移動はますます難しくなりました。

かつての水田環境を取り戻そう!

一筆型魚道

排水路が広く堰板が設置できない場所などで取り組まれている仕組み。

一筆型魚道

排水路に堰板を設置し、水位を階段状に10cmづつ上げて田んぼとの落差を解消し、上流域のすべての田んぼに上れる仕組み。

滋賀県では、「農業からみた水田環境」も「生きものからみた水田環境」も、どちらも必要と考え、農業の生産性を維持しながら生きものの豊かな農村環境を取り戻す取り組みを始めました。それが「魚のゆりかご水田プロジェクト」です。

仕組みは実にシンプル。琵琶湖から田んぼへ湖魚がのぼって来られるよう、農業排水路に魚道を設置するというものです。

水田は魚のゆりかご

魚のゆりかご水田実施箇所

田んぼに入ってきた親魚は、すぐに産卵し、産まれた稚魚は中干しまでの間、水田で過ごします。

稚魚にとって水田は温かく快適な場所。エサとなるプランクトンも多いため、早く成長することができ、1か月で、約2㎝くらいになります。ブラックバスなどの外敵もいないため、生き残る率も高くなります。

そして、中干しの時期に水田から排水路へ流下りゅうかし琵琶湖へ戻っていきます。田んぼは、フナなど在来魚の稚魚にとって、まさに「ゆりかご」なのです。

魚たちとともに育まれた「魚のゆりかご水田米」

滋賀県は、魚にやさしい田んぼでつくられたお米を「魚のゆりかご水田米」として認証しています。認証にあたっての条件は次の3つです。

  1. 湖魚が産卵のために田んぼへ遡上し、そこで孵化ふか・成長した稚魚が確認でき、中干し時には稚魚が流下しやすいよう「溝切り(※)」が行われていること
  2. 農薬・化学肥料を通常の50%以下に減らして栽培する“環境こだわり農産物”であること
  3. 除草剤を使用する場合は、水産動植物(魚類、甲殻類)に影響を及ぼすとされている除草剤を使用しないこと

※溝切り…田んぼに溝を切り、排水口につなげておく作業。スムーズに排水が行えるだけでなく、稚魚が田んぼから排水路へ流下できるようになります

中干し時に排水口から流下するニゴロブナの稚魚

中干し時に排水口から流下するニゴロブナの稚魚

環境保全のためにさまざまな工夫を重ね、さらに、魚が田んぼで産卵・繁殖できる環境を保つために、通常より手間ひまをかけて、琵琶湖にも魚にも、そして人にもやさしい環境で育つ「魚のゆりかご水田米」。
「魚のゆりかご水田米」を購入し、食べることが、こうした生産者を応援し、魚や琵琶湖を守ることにつながります。
「魚のゆりかご 水田米」をよろしくお願いします
魚のゆりかご水田米 2kg

魚のゆりかご水田米 2kg

8月3回(コープしがマルシェ3ページ)に掲載しています。※本体価格1,080円

かつて当たり前だった農村の光景と繰り返されてきた魚たちの営みを現在に取り戻す魚のゆりかご水田プロジェクト。
滋賀県では、昨年2月に日本農業遺産として認定され、現在、FAOに世界農業遺産認定の申請を行っている「森・里・うみに育まれる漁業と農業が織りなす琵琶湖システム」の象徴的な取り組みとして推進しています。
「魚のゆりかご水田米」を食べていただくことで琵琶湖をはじめとする自然環境が豊かになり、人や地域も健康で元気になりますので、皆様の応援よろしくお願いします。

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