本文へ

つくる現場から
しぼりたての風味が生きる、滋賀の牛乳
生協牛乳85

 パン食やおやつのおともでおなじみの牛乳。コーヒーと合わせるカフェオレなど、ほかの飲み物や料理に加えることも多く、誰もが日常的に親しんでいる食品のひとつです。
 みなさん、この白い液体のことを総じて「牛乳」と呼ぶ傾向がありますが、実は牛乳類には、いくつかの種類があることをご存知でしょうか。生乳100%をそのまま使用した「牛乳」をはじめ、生乳から水分や乳脂肪分など成分の一部を除去した「成分調整牛乳」、粉乳や乳脂肪分などを加えた「加工乳」、カルシウムや鉄分などを加えた「乳飲料」など、食品衛生法に基づく規定により種類分けされているのです。同じような紙パックで販売されていても、パッケージを見れば一目瞭然。商品名の下には、必ず種類別が明記されています。
 さて、今回登場する「生協牛乳85」は、滋賀県産の生乳100%から作られている「牛乳」です。近江八幡市で製造している高木牧場さんを訪ね、おいしさのひみつや製造工程について、お話をお聞きしました。

創業110年の歴史を誇る近江八幡市内の牛乳工場

平成4年に新しく建て替えられた製造工場。配送車にはかわいい牛の絵が描かれています。

 水郷や古い商家が姿を留め、滋賀県を代表する観光地としても名高い近江八幡市。1903年(明治36年)創業の高木牧場は、連日観光客でにぎわう八幡山の麓にあります。その名が表すように、以前は乳牛の飼育にも取り組み、搾乳から製品化まで行っていたそうですが、現在は、甲賀や東近江地域の酪農家から集乳した生乳が毎日運び込まれ、製造のみを行っています。

「僕が小さい頃は、まだ牛がいたんですよ。当時は60頭くらいは飼っていたと聞いています」という、四代目社長の高木潔さん。1970年代に、学校給食や生協の大量注文を受けることになり、製造に特化していったそうです。

 それから40年以上、全く同じ製法で作られてきたのが、この「生協牛乳85」です。「85」は殺菌温度で生乳本来の風味が感じられておいしいと人気があり、生協のロングセラー商品になっています。その製法は全国でも少数派のHTSTと呼ばれる高温短時間殺菌法を用いています。

酪農家レポート
~中谷成一さんのお話~

中谷さん

 甲賀市土山町で酪農3代目を継ぐ中谷さん。現在65頭の牛を育て、そのうちの40頭から搾乳しています。「牛も人間と同じ哺乳類なので出産して初めてお乳が出ます。続けてお乳を出すためには、ほぼ1年ごとに出産させる必要がありますが、無理にたくさんの乳を出させることより健康を第一に育てています」。

 牛の餌には「穀類(小麦・とうもろこし・大豆など)を中心にしたものと、牧草を中心にしたもの(粗飼料)を、牛の乳量や体調に合わせて与えている」という中谷さん。粗飼料の自給栽培を基本にし、約7ヘクタールの畑に牛ふん堆肥を入れ、とうもろこしを作っているそうです。「生乳の乳質には厳格な基準があります。病気になって薬などを投与すると、出荷できなくなるため、牛の健康管理にはとても気をつかっています」。

 現在滋賀県には50戸の酪農家があり、約3200頭の牛から毎日約55トンの生乳が生産されています。牛の健康管理をはじめ、朝夕2回の搾乳や給餌など、生き物を扱う酪農家は365日休みがありません。牛乳は、そんな酪農家のみなさんが牛から搾った生乳を原料に作られているのです。

生乳の風味を生かす製法ゆえ
デリケートな牛乳に

 日本で主流となっている殺菌法は、UHTと呼ばれる超高温瞬間殺菌法です。これは、100度以上で殺菌することで、すべての菌を死滅させる方法です。賞味期限も長く、扱いやすいことから、日本の牛乳の90%以上を占めますが、風味については、高温殺菌による乳タンパク質と乳糖の反応で、加熱フレーバーが生じるといわれています。これに対し、「生協牛乳85」の製造で取り入れているHTST製法は、85℃で15秒間加熱するというもの。この殺菌方法は、人に有害な菌は死滅させますが、生乳そのものの風味は残ると考えられています。ただ、すべての菌を死滅させるわけではないため、賞味期限が短く、取り扱いにも気を配る必要があります。「例えば、スーパーの帰り道、高温の車のなかに長時間置かれていたり、夏場に冷蔵庫から出されたままになっていると、UHT製法の牛乳よりも、当然いたみやすいです」と高木さん。「私たちがHTST製法の牛乳を提供できるのは、商品の特徴をお伝えできる交流会や、玄関先まで届ける配達システムなど、生協さんならではの仕組みがあるからなんです」。

HACCPシステム導入で
日々の衛生管理を徹底

 HTST製法の牛乳は、流通面と同様に、製造過程でもリスクを伴います。「ちょっと雑な作業をすれば、菌はすぐに増えてしまう」という高木さんは、衛生管理に一番気をつけているそうです。

 製造前に1時間以上かけて行う、製造設備の洗浄はもちろんのこと、生乳が運び込まれた時点での菌の検査や殺菌温度の保持、社員の衛生管理に至るまで、毎日の徹底した取り組みのもと、製造されています。こうした衛生管理のため、高木牧場は1999年からHACCPシステムを導入しています。HACCP(ハサップ= Hazard Analysis Critical Control Point)とは、製造工程で発生する恐れのある汚染や異物混入などについて事前に分析し、重要管理点を定め、日々監視していく工程管理システムのことで、厚生労働省の承認証を受けています。高木牧場は1999年、滋賀県内の食品業者で3番目に取得し、以来、毎年の審査を受けながら、3年ごとに更新を続けています。

「特性」を共有できる消費者へ
こだわりの味を提供し続けたい

学校給食用の200mlパック。近江八幡市、竜王町、野洲市、栗東市、草津市へ1日約27,000本を出荷しています。

 生乳本来の風味と引き換えに、厳しい衛生管理が求められるHTST製法の牛乳。日本ではシェア3%ともいわれるなか、高木牧場では、この牛乳の製造だけを続けています。生協用には「生協牛乳85」のパックに、また、幼稚園や小中学校の給食用には小さな紙パックに詰められ、毎日出荷される高木牧場の牛乳。それ以外は、近隣のスーパー1か所と、ご近所へのわずかな数の宅配にとどめ、「商品の特性を共有してもらえる顔の見える人」にだけ販売するスタイルを貫いています。

 他ではなかなか手に入らないHTST製法の牛乳。しぼりたての風味が楽しめると評判の味わいを、ぜひ「生協牛乳85」でお試しください。

牛乳の殺菌方法

低温保持殺菌(LTLT)

63~65℃で、30分加熱殺菌

高温保持殺菌(HTLT)

75℃以上で、15分以上加熱殺菌

高温短時間殺菌(HTST)

72℃以上で、15秒以上加熱殺菌

超高温瞬間殺菌(UHT)

120~130℃で、1~3秒加熱殺菌

((社)日本酪農乳業協会『牛乳・乳製品の知識』より)

牛乳の製造工程

① 受入検査

生乳の受け入れ前に実施。抗生物質の反応がないかなど、10種類以上の検査を行う。

② 清浄

強力な遠心分離装置などにかけ、生乳に含まれる目に見えないゴミや異物を取り除く。

③ 均質化

脂肪球が浮いてこないよう均質機で生乳に強い圧力をかけ、細かい粒子にして均質化していく。

④ 殺菌

生乳に含まれる細菌を殺菌機で加熱し、死滅させる。食品衛生法に基づいた、 いくつかの殺菌方法がある。

⑤ 充填包装
⑥ 製品検査
⑦ 冷蔵保管
⑧ 出荷

作り手からのメッセージ

株式会社 高木牧場 
代表取締役社長 
高木 潔さんん

 「生協牛乳85」は、おかげさまで45年近く、組合員のみなさまに愛されてきました。高木牧場では、今後もこの味を守り続けていきたいと思います。賞味期限が5日間と短いために敬遠されることもありますが、商品説明会などに積極的に参加して、ひとりでも多くの方に私たちのこだわりの製法をご理解いただければと思います。まずは、ぜひ一度、風味のあるおいしい牛乳を味わってみてください。

ページトップへ