福祉事業

福祉ネットワーク通信67号 あったかスイッチON

>>>13/07/15

コープしが福祉情報誌
福祉ネットワーク通信第67号
(2013年7月15日発行)より

 

あったかスイッチON


熊やんの口伝行脚(くでんあんぎゃ)のつどい「残り時間ゼロを生きる」
熊澤先生の生前葬に参加して

2013年5月12日(日) ピアザ淡海 大ホールにて開催

 

 今回は、大津市社会福祉協議会で相談員として様々な声に耳を傾けてこられた熊澤孝久(くまざわたかひさ)さんをご紹介したいと思います。大津市社会福祉協議会とびわこダルクでは、自らを「心のゴミ箱」と称して困りごとを聴き続けてこられた熊澤先生の言葉を冊子にまとめようと「熊やんプロジェクト」を計画をされていました。そんな矢先、熊澤先生に下咽頭癌という病魔が見つかったことで、予定を繰り上げ、この冊子のお披露目と、「声が出るうちに皆さんに直接お礼を伝えたい」という熊澤先生の想いから、「熊やんの口伝行脚のつどい」と題した生前葬が開催されました。

 

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サスペンダーがトレードマーク

 

熊澤 孝久(くまざわ たかひさ)さんプロフィール

1931年2月生。
【略歴】青年学校卒業、郷里の村役場、滋賀県職員(広報課長、労政課長、婦人相談所長)を経て1988年退職。“あなたの傍に私がいます”熊澤こころの相談所開設。民生委員児童委員8期23年、県介護保険苦情処理委員長10年、京都新聞社会福祉賞H24年度受賞。
【現在】社会福祉法人・大津市社会福祉協議会・心配ごと相談員、滋賀いのちの電話相談役、滋賀刑務所・篤志面接委員、滋賀医科大学篤志献体者の会・副理事長・常務理事、滋賀県断酒同友会・総務部長、NPO法人びわこダルク理事長、笑ってメンタルヘルス滋賀世話人等々。(※ダルクとは薬物依存症の民間施設のこと)

 

 熊澤先生と関わりのある方々が300人近く集まる中、びわこダルクの皆さんの演奏する力強い太鼓の響きで生前葬は始まりました。書籍「聴くが効く」の紹介では、熊澤先生の生い立ちから、現在に至るまでが綴られていて、これまで関わってこられた多くの方々の言葉が寄せられていました。
 口伝行脚では、ご自身の弱さのお話が始まりの言葉でした。仕事の忙しさから当時は合法であったヒロポンを常用し、そのために栄養失調から肺結核で入院、薬から脱したにもかかわらず、次はお酒に溺れアルコール依存症の診断により入院することになります。

 昭和58年に婦人相談所の仕事に復帰され、ここでは酒害の夫に暴力を振るわれて駆け込んでくる人々の相談を受けるという仕事に、「私自信がアル中で暴力を振るうご主人と同じ、加害者やのに相談を受けるというけったいなことをしていたわけですわ。」と熊澤さん。退職後にはアルコール依存症、薬物依存症や婦人相談所に来られていた人たちを対象に自宅で「あなたの側に私がいます 熊澤こころの相談処」を開設して相談に関わっておられました。そんな中、大津市社会福祉協議会からのお誘いがあり現在に至っておられます。昭和58年の婦人相談所から始まった相談業務は30年間も続けてこられたことになります。

 長年、相談業務に関わってこられた熊澤さんですが、「私には何を手伝うこともできません。またするべきではないと思っています。何の力もなく、ただあなたの側にいるだけですわ。」と。そして今も大津社協にいるのは、アルコール依存症になったおかげで、全て神さまの力だとおっしゃいます。ヒロポン中毒もアルコール依存症も、そして咽頭癌も全てムダなことではないと。「まわりの人にはえらい迷惑はかけてしもうたけど…。」そして、ダルクの仲間の中で私の今日はあると力強い言葉が心に届いてきました。
 どんなことも「聴いて、聴いて、聴いて…、聴くが効くんですわ。そして、どうしたらよいか分からんとき、自分にはどうにもできないときは、ま、ええか〜と思うこっちゃ。慌てたらアカン、ぼちぼち行こか〜や。」

 ご自身の弱さを認めて、人にもそれを示した上で、「そうか〜そうか〜」と相手の一言一言に頷くその姿に多くの人の心が救われたことは言うまでもありません。生前葬終了後、皆さんをお見送りしますと、参加者一人一人と握手をして言葉を交わされる姿がありました。その列はその後、1時間近くも続いたでしょうか。いつもと変わらず「そうか〜そうか〜」と頷く姿が深く脳裏に焼きつき、心の中で「ありがとう」をつぶやきました。

 

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ダルクの皆さんの和太鼓演奏で幕があきました

 

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参列者一人一人に挨拶を・・・

 

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熊澤先生の全てが詰まった書籍(お問合せは大津社協まで)

 

 

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